📘第14話 金利上昇の本質 ── 低金利という「麻酔」が切れるとき

2026/05/01

 
 
これまで、不動産市場を支えてきた前提が、
静かに変わり始めています。
 
「金利が上がる」
 
この言葉自体は、
すでに日常的に耳にするようになりました。
 
しかしその変化は、
単なる“返済額の増加”として
捉えるだけでよいものなのでしょうか。
 
この変化の本質を見極めなければ、
これまで機能していた判断軸そのものが、
通用しなくなる可能性があります。
 
 
後から振り返れば、
「なぜあのとき、あのような状態になっていたのか」
そう感じる出来事は、歴史の中にいくつも存在します。
 
バブル期も、その一つです。
 
例えば、当時の状況を振り返ったとき、
なぜあれほどまでに価格が上昇し、
その状態を多くの人が疑うことなく受け入れていたのか。
 
なぜ「おかしい」と気づくことができなかったのか。
 
そしてなぜ、
多くの人が同じ方向を見て、
歩調を合わせるように動いていたのか。
 
私はその時代を当事者として経験していません。
 
だからこそ、
その状況が不思議で仕方がありませんでした。
 
なぜそのようなことが起きたのか。
どのような構造の中で、
その状態が成立していたのか。
 
 
自分なりに向き合い、整理していく中で、
ある一つの共通点が見えてきました。
 
それは、
個々の判断が特別だったのではなく、
環境そのものが、
その判断を“正しいものに見せていた”
という構造です。
 
 
実際に売主様から、
平成一桁台に建築・購入された物件の当時の価格や経緯を
伺う機会が多々あります。
 
今では到底考えられないような低い利回り。
そして、それとは対照的な耳を疑うような高金利。
収益性では到底説明がつかないような高値での取引──。
 
 
私はその時代を経験していないにもかかわらず、
当時の判断がどのような空気の中でなされていたのかを、
現実として突きつけられるような感覚を覚えることがありました。
 
 
そして、数多くの買主様と向き合う中で、
バブル当時と共通する要素があるように強く感じるようになりました。
 
なぜでしょうか?
 
それは、買主様の意思決定や行動は、
外から見ると驚くほど似通っているためです。
 
地域も仕事も異なるはずなのに、
まるで同一人物かのように、
思考回路が同じ方向に収束していく。
 
いえ、それは収束というよりも、
何かに駆り立てられるかのように、
皆が同じ一点だけを見つめている。
 
その光景に触れるたび、
なぜバブル期においても、多くの人が同じ方向を向き、
同じように行動し、そして同じように崩れていったのか。
 
その構造と重なるものを感じてきました。
 
また私は、物件を購入・保有する立場ではなく、
仲介という立場から全体を俯瞰してきました。
 
だからこそ、
当事者としての利害に縛られることなく、
この構造を歪めることなく冷静に捉えることができています。
 
 
今回の内容は、
そうした現場での経験と視点をもとに、
実際の投資判断に落とし込める形で整理したものです。
 
そしてその構造は、時代が変わっても、
本質的には大きく変わっていないのではないか。
 
そう感じるようになりました。
 
私が現場で感じているのは、
現在の収益用不動産の現場においても、
それに近い構造が一部見え始めているということです。
 
長く続いた低金利の環境は、
本来であれば成立しづらい条件であっても、
一定の形で成立させてきました。
 
多少の歪みがあっても、
回ってしまう。
 
本来は慎重に見極めるべき判断が、
“融資が通るかどうか”という一点に寄ってしまう。
 
そうした状態が、
当たり前のように続いてきたのです。
 
しかし、金利が上昇する局面においては、
その前提が通用しなくなります。
 
これまで見過ごされてきたズレや構造が、
一つひとつ表面化していく。
 
それは、
単なるコストの問題ではありません。
 
その不動産が、
事業として本当に成立しているのかどうか。
 
その本質が、
改めて問われる局面に入ってきているのです。
 
 
事実、実際の現場においても、
過去の低金利環境の中で取得された物件が、
現在の市場環境との間で整合が取れず、
出口において苦戦しているケースを目にする機会が増えてきました。
 
価格と収益性、そして金利を含めた融資条件。
 
そのバランスが崩れたとき、
これまで成立していた前提が通用しなくなる。
 
それは単なるシミュレーション上の数字ではなく、
血の通った「経営の現場」で今まさに起きている現実です。
 
仲介という立場でその苦悩を間近に見てきたからこそ、
今、お伝えしなければならないと感じています。
 
 
本記事(5月号・ビジネス編)では、
バブル期における構造と金利の関係も踏まえながら、
なぜ当時、
あのような状態に至ったのか。
そして現在は、
どのような局面に差し掛かっているのかを整理していきます。
 
✔ なぜ当時、異常な状態が成立していたのか
 
✔ 金利環境が市場に与える本質的な影響
 
✔ 現在の市場に見られる共通構造
 
✔ 買主・売主双方に起きている「静かな異変」
 
✔ 今後求められる判断軸とは何か
 
✔ 「通る」から「成立する」への転換
 
✔ 低金利という「麻酔」が切れた後に残るもの
 
その変化は、
すでに静かに始まっています。
 
 
👉【noteで読む】
 
この構造の正体と、今まさに起きている変化については、
note本文で整理しています。
 
この変化に気づかないまま、
麻酔が効いた状態の判断軸で動き続けたとき、
何が起きるのか。
 
その答えは、
すでに現場で静かに現れ始めています。
 
それは、
時間の経過とともに、より明確な形で表面化していきます。
 
だからこそ、今の段階で気づけるかどうかが、
その後の結果を大きく分けることになります。
 

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執筆者

高木 恵美

複数の業界で営業職を経験し、今は一棟収益マンションの仲介業を全国で行っています。
営業としての土台を築いたのは、リクルートでの4年間。厳しくも濃密な経験が、私の原点です。
感性を大切にしながら、物件の背景や売主様・買い主様の想いに寄り添い、同時に、数字や収支の分析など、専門性もしっかりと持ち合わせた“両輪”の姿勢で、誠実な取引を心がけています。